死神の恋
「未来。じゃあまた明日ね」
「うん。じゃあね」
学校の帰り道、どんぐり公園の入り口で真美と別れる。真美のウチはどんぐり公園を右折した先に、私のウチはどんぐり公園を左折した先にある。
お腹も空いたし、早く帰ろう。
少しだけ歩調を速めると、すぐ先に小さな人影が見えた。そのシルエットに心あたりがあった私は地面を蹴り上げ、走り出す。
「佐伯のおばあちゃん!」
少し腰が曲がった人影は、私の向かいの家に住んでいる佐伯のおばあちゃん。私の声に気づいたおばちゃんが足を止めて振り返る。
「あら未来ちゃん、今帰り?」
「うん、そう。おばあちゃんは?」
「お醤油を切らしちゃったから、そこのスーパーに買いに行ったのよ」
「そっか」
佐伯のおばあちゃんはスーパーの白いレジ袋を掲げると、フフフッと笑った。
小さくて優しい佐伯のおばあちゃんと一緒にいると心が和み、ダンスの練習の疲れが癒されていく気がした。
佐伯のおばあちゃんに歩調を合わせ、家に向かってゆっくりと足を進める。
「未来ちゃん、学校は楽しい?」
「うん。楽しいよ」
真美やクラスメイトの愛梨と菜々美と一緒に過ごす時間は、とても楽しい。でも授業は楽しいとは思えないし、ダンスのハードな練習はつらくて苦しい。けれど、そんな弱音を佐伯のおばあちゃんに打ち明けても心配をかけるだけ。だから私は『楽しいよ』と曖昧に返事をした。