死神の恋
平凡な私にだって、夢見る権利はある。私の彼氏の理想像は、優しくて頼りがいがあって、明るくて爽やかで、頭がよくてスポーツも得意。笑顔が素敵でイケメンで……。
そう。私の彼氏の理想像は、目の前にいる彼とは真逆の人だ。
「違うからっ!」
佐伯のおばあちゃんの『彼氏?』という問いかけを全力で否定した。でもおばあちゃんは、ニコニコと微笑むばかり。
「まあ、照れちゃって。それじゃあ、もう遅いから気をつけてね」
佐伯のおばあちゃんに、学校の裏庭で起きたことを説明するのは骨が折れる。また違う日に詳しく話そう。
「うん。おばあちゃんもね」
「ありがとう」
少し先にある家に帰って行く佐伯のおばあちゃんの後ろ姿を見送った。
さて、問題はここからだ。
本当ならヤバい彼のことなど無視するのが一番いい。でも目と鼻の先にあるウチに帰るところを見られては困る。彼に私のウチを知られるのは絶対に嫌だ。
こうなったら、今ここで決着をつけよう。
肩にかけていた鞄を胸に抱え、覚悟を決める。そして足を後退させると、万が一に備えて彼から距離を取った。
まず確認するのは、このことだ。