死神の恋
両親より先に葬儀会場を後にすると、真美とともに帰路につく。人通りが多い駅前通りを過ぎると、真美が声をかけてきた。
「未来? 大丈夫?」
「……うん」
幼なじみの真美は、私が佐伯のおばあちゃんを慕っていたことをよく知っている。葬儀中は真美も泣いていたけれど、今は気丈に私を心配してくれている。
これ以上、真美に気を使わせたくない。
そう思っているのに気持ちが沈んでしまうのは、佐伯のおばあちゃんが亡くなったからだけじゃない。『あのバアさん、死ぬぜ。そしてオマエもな』という予言のような彼の言葉に、私は怯えているのだ。
もしかしたら前方から走って来る車に轢かれるかもしれないし、今この場で心臓発作が起きるかもしれない。
死に対する恐怖を感じ、ビクビクしながら足を進めていると、あっという間にどんぐり公園にたどり着いてしまった。
真美とはここでお別れ。でも今はひとりになるのが怖い。
「真美。あのね……」
もう、ひとりで不安を抱えるのは限界。
佐伯のおばあちゃんが亡くなる前日の出来事を、真美に打ち明けようとしたそのとき、どんぐり公園から不意に人影が現れた。
些細なことでもすぐに怖がってしまうのが私の癖。肩がビクリと跳ねると同時に、「キャッ!」と短い声があがる。
私と真美は葬儀に参列したばかり。もしかしたら霊的なものが?と不安になり、すぐさま瞳をギュッと閉じた。けれど耳に聞こえてきたのは、聞き覚えのある低い声。