死神の恋
これで真美から解放される。
ホッと胸をなで下ろし、顔を上げる。しかし真美の表情は相変わらず不機嫌なまま。
「未来。朝練に来なかった理由、昼休みに聞かせてよね」
これ以上、同級生の注目を浴びたくなかった私は、この場を収めるために「……うん。わかった」と返事をした。
「未来。お昼食べよう」
「うん」
四時間目が終わった昼休み。クラスメイトの愛梨と菜々美が私のもとにやって来た。いつものように空いている机とイスをくっつければ、ランチタイムの始まり。でも今日は食欲が湧かない。
「未来? 食べないの?」
机の上にお弁当を置いたものの、いつまで経ってもフタを開けない私に気づいた菜々美が声をかけてくる。ふたりには真美とケンカしたことは話していない。
愛梨と菜々美に心配かけないように「食べるよ」と答えて作り笑いをすると、お弁当箱のフタを開けた。すると背後から「未来!」と、名前を呼ばれる。振り返った先に見えたのは、教室の後ろの出入り口で私に向かって手招きをする真美の姿。
これから朝の続きが始まる。そう考えただけで気が滅入る。でも家も近所で同じ学校に通っている真美を避けるのは不可能だ。
「ごめん。先に食べてて」
一度開けたお弁当箱のフタを閉めて愛梨と菜々美にそう告げると、真美のもとに向かった。