死神の恋
スタスタと足を進める真美の後を追い駆けると、北棟三階の化学室前にたどり着く。
南棟と渡り廊下で繋がっているものの、授業のない昼休みにこの場所を訪ねる生徒はいないはず。
ここなら真美がヒートアップしても、同級生にジロジロと見られる心配はないと安堵した。
「未来。朝練に来なかった理由は?」
私と向かい合った真美が、ズバリと本題を切り出してくる。
昨日の練習と今日の朝練習をサボったのは、真美に不満を感じているから。
佐伯のおばあちゃんと同じように、自分も死んでしまうのかもしれないという恐怖と不安に寄り添ってもらえなかったことを私は今でも根に持っているし、そもそも自分が死ぬかもしれないというのに呑気に踊っている場合じゃない。
「昨日はなにも言わなかったのに……」
朝は黙り込んでしまった私も、同級生の目がない化学室の前なら反論できるといきり立つ。しかし口から出たのは自分が想像していたよりも、はるかに小さい声。やはり私は、大きな声で自己主張するのは苦手だと痛感する。
「それは、昨日はあんなことがあった次の日だったし……」