死神の恋
真美が口にした『あんなこと』とは、佐伯のおばあちゃんのお通夜の日のこと。帰り道で彼が再び姿を現し、私と真美はケンカをした。
散々だった日を思い返しながら、まだ続く真美の話に耳を傾ける。
「たまには練習をサボりたいっていう未来の気持ち、わかるよ。でもずっと休んだら、練習に参加しづらくなるでしょ?」
たしかに真美の言っていることは正しい。けれど頭ごなしに自分の考えを押しつけられたら、いい気はしない。
「……偉そうに意見しないで」
口からこぼれ出たのは、真美に対する不満。ダンスどころではない私の気持ちを理解してくれない真美に、もどかしさを感じてしまう。
「偉そうにって……そんなつもり、なかったのに……」
真美の声が、次第に小さくなっていく。
私、真美を傷つけた……。
真美に『偉そうに』と言ってしまったことを後悔し、すぐに謝ろうとした。でも真美に言い返した手前、すぐに素直になることができない。
「もう、私のことは放っておいて」
“ごめんね”の四文字の代わりに自分の口から出た言葉に一番驚いたのは、私自身。つまらない意地を張ってしまった自分に失望しつつ、瞳を伏せる真美の前から駆け出した。