死神の恋
五時間目が終わると、きのこの形をしたチョコレート菓子の小袋が机の上にポンと置かれた。
「未来。お腹空いたでしょ? これあげる」
私に声をかけてきたのはクラスメイトの愛梨。彼女の席は私の斜め前だ。
真美から逃げるように教室に戻ってきたものの、すぐにチャイムが鳴ってしまった。
鞄の中には手をつけていないお弁当が入っているけれど、食欲がない。それでも大好きなチョコレートのお菓子なら食べられる。
「ありがとう」
愛梨にお礼を告げるとパッケージを開けた。
「ねえ、未来。明後日の土曜日、菜々美と一緒にあっくんの誕プレ選びに行くんだけど、未来も一緒にいかない?」
愛梨の彼氏である『あっくん』の誕生日まで二週間を切った。
愛梨も菜々美も、土日はダンス部の練習があることを知っている。にもかかわらず、私を誘ってくるとは珍しい。
もしかして、私を元気づけようとしてくれている?
授業中だというのに、口から出るのはため息ばかり。真美に『偉そうに意見しないで』と言ってしまったことを後悔しているのだ。
真美とケンカしたことは、愛梨と菜々美には打ち明けていない。けれど、どことなくいつもと様子が違う私に気づいたのかもしれない。
詳しいことは聞かずに、さりげなく私を誘ってくれた愛梨の心遣いがうれしい。
こうなったら真美のこともダンスのことも、忘れてしまおう。
半ばヤケになって「うん。行く」と返事をすると、きのこの形をしたチョコレート菓子を口にポイッと入れた。