死神の恋

愛梨の手に握られているのは、あっくんの誕生日プレゼントが入った紙袋。そして菜々美は、ライダースジャケットが入ったショップ袋を肩に下げている。

「ねえ、未来はほしい物ないの?」

手ぶらの私を気遣うように、愛梨が声をかけてきた。

今、私がほしいのはダンスシューズ。最新モデルのシューズを履いて、ステージで踊ればテンションが上がる。でも少ないおこづかいでは買うことができないし、そもそもダンスの練習をサボっている今の私にとって、ダンスシューズは必要のない物。

最新モデルのダンスシューズを頭の中から強引に追い出す。

「あ、そうだ。消しゴム買わなくちゃ」

ダンスシューズの代わりにモヤモヤと頭の中に浮かび上がったのは、学校で使っている消しゴム。だいぶ小さくなったので、そろそろ新しいのを買おうと思っていたのだ。

「消しゴムって、小学生かっ!」

鋭いツッコミをした菜々美がケラケラと笑い出す。

ショッピングモールにはオシャレな服やバッグ、かわいい雑貨やコスメなど、ありとあらゆる物が売っている。それなのに買おうと思い立ったのが消しゴムだなんて、女子力が低すぎる。

「だよね……」

菜々美のツッコミに苦笑いをすると、力なく肩を落とした。

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