死神の恋

愛梨が私と菜々美のお皿にピザをワンピースずつのせると、三人でそれぞれの料理をシェアし合う。

ピザとオムライスとパスタを同時に食べられるなんて、すごく贅沢。頬が勝手に緩んでしまった。

「ねえ、未来。ダンス部辞めるの?」

「えっ?」

しかし愛梨のひと言で、束の間の幸せから現実に引き戻される。

「ここ最近、ずっと練習に出ていないみたいだから、辞めるのかなって菜々美と話していたんだ」

「そっか……」

愛梨と菜々美には、名前も知らない彼から死ぬと言われたことも、真美とケンカをしたことも、今はダンスに集中できないことも打ち明けていない。

内緒にするつもりはないけれど、今まであったこと一から説明するのは骨が折れるし、こんな楽しくない話を聞かされても、愛梨も菜々美も困るだろうと思ってしまう。

「それで、辞めるの?」

シェアしたピザを頬張った菜々美が、核心に迫ってくる。

「まだハッキリ決めてないけど、このまま練習をサボっていたら退部になるかも……」

ダンスは好き。でも今は練習に参加する気分にはなれない。だったら潔く退部届を出せばいいのに、その勇気もない。

煮え切らないままテーブルに頬杖をつくと、パスタをフォークに巻きつける。その様子は、グルグルと回る自分の今の気持ちと同じ。

私って決断力ないな……。

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