死神の恋
午前の授業が終わった昼休み。愛梨と菜々美に「ちょっと用事があるから」と告げると、教室を抜け出す。向かうのは駐輪場の先にある裏庭。そこは真美がダンスの特訓場所として選んだところだ。
芝生広場にベンチがポツンと置いてあるだけの寂しい裏庭には、やはり人の姿はない。でも彼は、きっといる。
そう信じてサツキの植え込みの向こう側をヒョイと覗いてみれば案の定、彼の姿があった。芝生の上に寝転んでいる彼の長めの黒髪が、そよ風になびいて微かに揺れているのが見える。
「あのっ!」
「……」
スヤスヤと寝息を立てる彼に向かって大きな声をかける。しかし彼はピクリとも動かない。
「あのっ! すみません!」
再び声を張りあげると、彼の瞼がゆっくりと開いた。私を見とめた彼の口から出たのは、初めて会ったときと同じ言葉。
「……安眠妨害しないでくれる?」
相変わらずマイペースな彼が腹立たしい。でもこんなことで、いちいち怒っていては話が進まない。
「あなたに聞きたいことがあるんですけど」
「……なに?」
ダルそうに上半身を起こした彼が、癖のある前髪をクシャリと掻いた。
「佐伯のおばあちゃんが亡くなるって、どうしてわかったの?」
彼とはもう関わらないと決めた。それなのに自ら彼のもとを訪ねたのは、ずっと心に引っかかっていたことを尋ねたかったから。