死神の恋

以前、私は彼のことを『死神!』と罵った。けれど、あれは言葉のあや。死神が本当にいるとは思っていないし、彼はどこからどう見ても普通の男子高校生だ。

そんな彼が、おばあちゃんが亡くなることを言いあてることができたのはどうして?

彼の口からどんな答えが返ってくるのだろうか、と耳を澄ました。

「……目を凝らすと見えるんだ」

「なにが?」

「人の死が……」

彼はポツリとそうつぶやくと、膝を抱えた。

現実離れしている彼の言葉をすぐに信じることなどできない。だって人の死が見えるって、そんなバカなことがあるわけがないでしょ?

嘘をつくならもっと上手な嘘をつけばいいのに……。

そうあきれ返ったものの、彼の言うことが嘘なのか本当なのかを確認する方法をすぐに思い立った。

「それじゃあ、おばあちゃんのときはどんな死が見えたの?」

彼の言葉通り、佐伯のおばあちゃんは亡くなった。でもそれは、ただの偶然だったかもしれない。

ドキドキと鼓動が音を立てる中、彼の口からどんなことが語られるのかと、そのときを静かに待った。

「……あのバアさんのときは、台所で倒れるのが見えた」

「……っ!」

思わず息を飲んだのは、佐伯のおばあちゃんが亡くなったときの様子を彼がズバリと言いあてたから。人から聞いたという可能性もあるけれど、彼がそこまでする必要はないはずだ。

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