死神の恋
8.新人大会

名前も知らない彼の前で涙を流した日から、約一ケ月が経った土曜日。今日は二週間後に迫った新人大会に出場するメンバーの選考会だ。

真美とはいまだにケンカしたまま。顔を合わせても口を利かないし、登下校も別々だ。

そして名前も知らない彼とも、あれきり会っていない。

私の後をつけてまで死ぬこと告げてきた、あの必死さはなんだったのだろうと思ってしまう。

とにかく今はダンスに集中しよう……。

真美のことも彼のことも頭から追い出すと、ストレッチを開始した。



体育館のステージの上で、軽快なリズムに合わせてステップを踏む。緊張していないと言ったら嘘になる。でもダンス中は笑顔を絶やしてはいけない。口角が下がらないように気をつけながら踊り続けた。

ダンス部顧問の吉崎先生と原口コーチがステージの下から、部員ひとりひとりを品定めするように厳しい視線を向けてくる。

三十二名の部員から選抜メンバーに選ばれるのは二十名。ステージ上の部員たちの踊りは、いつも以上に熱が入っている。

十月も中旬を過ぎると時折吹く風が寒く感じる日もある。しかし今の体育館は夏のような熱気に包まれている。

約五分のダンスが終わる頃には息が切れ、額からポタリと汗が滴り落ちる。それでも力を抜くわけにはいかない。

最後の力を振り絞り、ラストのポーズを決めた。


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