死神の恋

つい先ほどまで熱意に満ちあふれていた体育館も、今は水を打ったように静まり返っている。もうすぐ選抜メンバーが発表される。ともに励まし合い成長してきたチームメイトも今は全員がライバルだ。

大きく深呼吸をする者、うつむいたまま身じろぎしない者、タオルで顔を覆う者、緊張をほぐす方法は人それぞれ。

そんな中、体育座りをして発表を待つ部員の前に、顧問の吉崎先生と原口コーチが姿を現した。

ピリピリとした空気が漂う体育館に、吉崎先生の声が響き渡る。

「選抜メンバーを発表します。野村美南」

「はい!」

「鈴木紫織」

「はい!」

キリッと引きしまった返事をした美南と紫織が、その場から立ち上がる。

部長の美南と副部長の紫織が真っ先に選ばれるのは当然だ。

「小暮由香」

「はい!」

美南と紫織の次に名前を呼ばれた由香が、その場から立ち上がった。

由香は部員の中でダンス歴が一番長くて技術力も表現力も高い。彼女が選ばれるのは納得がいく。

「新倉真美」

「はい!」

由香の次に名前を呼ばれた真美が、同じくその場から立ち上がる。

真美は絶対選ばれる。そう思っていたから、とくに驚きはなかった。

「増田理穂」

「はい!」

「小山亜紀」

「はい!」

吉崎先生の口から次々にメンバーが発表されていく。

ダンスは好きだけど、基礎練習は嫌い。かわいい衣装を着て楽しく踊ることができたら、それで満足。

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