死神の恋
そう思っていた私が練習に励むようになったのは、ダンスに夢中になれば死の恐怖と不安を忘れられると思ったから。
けれど練習に打ち込むうちに、もっとキレのあるステップを踏めるはず、もっとブレずにターンできるに決まっている、とダンスにのめり込むようになった。
そしていつしか、選抜メンバーになりたい。ううん。絶対に選抜メンバー入りを果たす!という風に気持ちが前向きに変化していったのだ。
次こそは吉崎先生の口から自分の名前が呼ばれる……。
そう祈り、手に汗を握ってその瞬間を待った。
「田口あかり」
「はい!」
しかしいつまで経っても、私の名前は呼ばれない。
たった一ケ月、死に物狂いで練習に励んだからといって、急激にダンスが上達するわけじゃない。楽しく踊れればいいと思っていた私がメンバーに選ばれるほど、甘い世界じゃないと覚悟を決めた、そのとき……。
「葉山未来」
吉崎先生の口から二十人目のメンバーである私の名が呼ばれた。
登下校時にはスマホに取り込んだダンスの楽曲を聞き込み、昼休みは北棟の化学室の前でダンスの動きを確認する。そして家では腹筋や腕立て伏せなどの基礎練習を黙々とこなした。
朝起きてから夜寝るまで、なにかに取り憑かれるように練習に明け暮れたのは今回が初めて。
その努力が報われたことが、なによりうれしい。
「は、はい!」
泣きたい気持ちを堪えながら、震える足でその場から立ち上がった。