死神の恋

すると真美に「未来」と名前を呼ばれる。おずおずと顔を上げれば、真美の口角がニコリと上がった。

「選抜メンバー入り、おめでとう!」

体育館では不機嫌そうだった真美の表情も、今は満面の笑みが浮かんでいる。

真美は口を利きたくないほど、私を恨んでいる。そう思い込んでいた私にとって、真美のお祝いの言葉は予想外。

「ありがとう。真美もおめで……とう」

驚きと喜びが入り混じり、感極まった私の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「ありがとう。ねえ未来、泣かないでよ」

「だって……」

メソメソと泣いている場合じゃない。真美には聞きたいことと、聞いてもらいたいことが山ほどある。

そう思っていても、込み上げてくる涙を止めることができない。

でも、これだけは絶対に伝えなくちゃ……。

タオルで涙を拭うと真美の顔を真っ直ぐ見つめる。そして、ずっと言えずにいた言葉を口にした。

「真美。ごめんね」

涙で視界がユラユラと動いて、真美が今どんな表情を浮かべているのかわからない。けれど私と真美は幼なじみで親友。

「ううん。私も……ごめんね」

真美の声が一瞬詰まったのは涙のせいだと、すぐにわかった。

< 75 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop