死神の恋
正面口から外に出て、プラザホールの噴水の脇を通り過ぎる。私の前を進む彼の歩幅は大きくて、小走りしないと追いつけない。
通学鞄と衣装が入ったサブバックを手にしている私のことなど構わずに、スタスタと歩いて行く彼を恨めしく思いながら、後をついて行った。
するとプラザホールの角を曲がった先で、彼が足を止める。裏口に続くこの場所には、私たちのほかに人の姿はない。
今日は日曜日。休みの日に新人大会が開催されているプラザホールに足を運んでまで、私に話したいことって、なに?
向き合った彼の顔を見上げる。
「もうすぐ死ぬのに、どうしてそんなに一生懸命になれるの?」
彼の口から出るのは、いつも私の死に関することばかり。やはり今回もそうだったか、と肩を落とす。
彼のことも自分が死ぬかもしれないこともすっかり忘れていたのは、ダンスにのめり込んでいたから。彼に『一生懸命』と言われて心あたりがあるのは、やはりダンスしかない。
「一生懸命って……ダンスのこと?」
「そう」
うなずいた彼の姿を見て疑問に思う。
たしかに私たち旭ケ丘高校ダンス部は全力を出し切った。でも私たちの踊りを見なければ『一生懸命』だったと、わからないはずだと……。
「もしかして私たちのダンス、見てくれたの?」
「……ああ」
「……っ!」
ダンスに興味があるようには見えない彼が、私たちの演技を見てくれたことに驚く。
私たち旭ケ丘高校ダンス部の目標は、新人大会で優勝して全国大会に出場すること。出番を終えてあとは結果を待つばかりの身である私が、彼に聞いてみたいのはただひとつしかない。