死神の恋
生徒の賑やかな声があちらこちらから聞こえてくる昼休み、校舎を出るとあてもなく足を進める。けれど、ひとりになっても新人大会の結果が頭から離れない。
「ああ、もうっ!」
苛立った気持ちを思い切って声にしてみれば、少しだけ気分が落ち着いた。しかし、すぐさま羞恥心に襲われる。
誰にも見られてないよね?と、慌てて辺りを見回してみれば、自分が裏庭に来ていることに気づいた。
彼と初めて会ったのは、文化祭が終わった九月上旬。彼は太陽の日差しを遮ってくれるサツキの植え込みの裏で、昼寝をしていた。
あのときから二カ月が経ち、季節は初冬を迎えた。コートやマフラーはまだ必要ないけれど、空気がひんやりとして肌寒さを感じる日もある。
そろそろ外での昼寝はきついんじゃないのかな?
ふと彼の身が気になり、忍び足でサツキの植え込みに近づいてみた。
でも、そこでハッと気づく。彼が風邪をひこうが、私には関係ないことだと……。
彼に気づかれる前に、とっとと立ち去さろう。
そう決心すると、サツキの植え込みから慌てて離れた。
無意識のうちに裏庭に来てしまうなんて、私どうかしている……。
自分の不可解な行動に悩みつつ、足を一歩踏み出す。すると白いレジ袋を右手にぶら下げた彼が、こちらに向かってくるのが見えた。