死神の恋
「ごめんなさい」
きっと彼は、不満ばかり並べ立てる私にあきれている。友人でもない彼に、こんなつまらない話をするんじゃなかったと、すぐに後悔した。
やはり、彼と関わるとロクなことがない……。
そう痛感した矢先、彼がガサゴソと音を立てて、白いレジ袋からパンを取り出した。中から出てきたのは焼きそばパンとメロンパン。
「食う?」
「えっ?」
「ひとつ、どうぞ」
彼はそう言うと、私にメロンパンを差し出してきた。
正直なところ、昨日から食欲がない。でも彼の好意を無下にもできない。
「ありがとう」
結局、断り切れずに彼からメロンパンを受け取った。すると大きな口を開けて焼きそばパンにかぶりついた彼が、ベンチをトントンと叩く。
まさかこれって、隣に座れってこと?
予想外の成り行きに戸惑ったものの、ボケっと突っ立っていても仕方ない。
「お邪魔します」と小さく言うと、彼の隣に浅く腰を下ろした。
彼について知っているのは、学年がひとつ上で、昼休みには裏庭で居眠りをすることだけ。名前もクラスも知らない彼と、同じベンチに座り昼休みを一緒に過ごしていることが、なんだか不思議だ。
「食わないの?」
「あ、いただきます」
「どうぞ」
彼に促されるように袋を開けると、メロンパンをパクリとかじる。
自分が食べるつもりで買ってきたパンを、彼は私にひとつくれた。