死神の恋
甘いメロンの香りがほんのりと漂うそのメロンパンの味は、いたって普通。でも彼のさりげない思いやりを感じながら食べるメロンパンは、今まで食べたメロンパンの中で一番おいしいと感じた。
「世の中、理不尽なことだらけだって」
焼きそばパンをペロリと食べ終えた彼が、ポツリとつぶやく。
もしかして、それが私の愚痴に対する答え?
時間差で私を励ますようなことを言う彼がおもしろい。
初めて会ったあなたに『近いうちに死ぬぜ』と言われたことも、十分理不尽なんだけど……。
心の中でこっそりと毒づいてみれば、少しだけ気分が上がった。
晴れ渡った空から照りつける日差しがまぶしくて目を細める。今日がこんなにいい天気だと気づかなかったのは、下を向いてばかりいるからだ。
丸まっていた背中をピンと伸ばして「そうかもね」と返事をすると、引き続きメロンパンを頬張った。
昼休みのひととき。心穏やかに過ごせるのは、彼が死に関することを珍しく口にしないせい。
もしかしたら、私が死ぬことは嘘だったのかもしれない……。
そんな期待に胸を膨らませた矢先、彼が爆弾を落とした。
「アンタさ。この先、どうするつもり?」
「この先って?」
「死ぬまでってこと」
「……っ!」