御曹司とおためし新婚生活
時々声を発しても『さあ』とか『興味ないな』とか『少し黙っていろ』と、クールというよりドSな言葉で対応していて。
いつもならМっ気のある女性社員たちが冷たい対応をされてもめげず、むしろ心臓にヒットしてときめいているのを横目で見てちょっと引いていたのだけど。
残念ながら、本日は私がその冷たい弾丸に撃たれて倒れなければならないようだ。
そしてさらに残念なことに、その弾丸で私がときめくことはない。
天国に上って夢見心地どころか、地獄さながらの北極に水着姿で放り出されカチンコチン状態だ。
もう夏直前というこの時期に。
しかも目の前には東雲部長というシロクマ。
ゆずちゃんが乗るヘリは、シロクマではなくイケメンのハートを撃ち落とすことに全力を注いでいる為、救助は期待できない。
つまり、この手ごわいシロクマぶちょ……東雲部長を引き続きひとりで相手をしないとならないということだ。
生還できるのか、私は。
東雲部長がコトリと音を立ててビールグラスをテーブルに置く。
その音が開戦の合図となり、東雲部長とお話をしようチャレンジの幕が上がった。