御曹司とおためし新婚生活


一時間後。

ようやくお開きとなって席を立った私は、東雲部長の攻撃に耐えられる女性社員たちに敬意を表したいくらの気分だった。

プライベートには突っ込みすぎない程度の当たり障りのない会話を心掛けていたけれど、部長の返事は相槌、時々攻撃。

途中で見かねたのであろうゆずちゃんが話題を振ってくれたり、鳳さんが話しかけてきてくれたおかげでどうにか迎えた終戦。

ほぼ私の負けという結果だけど、頑張ったと思う。

東雲部長の言葉の攻撃で若干まだ心は痛いけど、今もどうにか笑顔は保てている……はず。

少しよろよろしながらも、お会計の為に伝票を手に取ろうと伸ばしたら、横から伸びてきた腕。

私の手に収まるはずだったそれは、あっという間に。


「え、ちょ、部長」


ジャケットを腕にかけた東雲部長に攫われてしまった。


「まだ計算してないですよ」

「いい。今日は俺が払う」


お前はそんなに飲んでいないだろうと続けて言われて、それでも申し訳ないから自分が飲んだ分はと言おうとしたら。


「ね、亜湖ちゃん」


後ろから、鳳さんに手を掴まれて引き止められる。

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