御曹司とおためし新婚生活


彼と付き合い始めて二カ月半。

まだ社内には秘密にしながらだけど、トラブルもなく恋も仕事も順風満帆な私は、現在、新作発表会にて、雪の結晶があしらわれた舞台に立つ谷川さんの華麗なメイクテクニックを見守っていた。

私のアイデアが採用された会場には、たくさんのゲストが来場している。

あの日、声にしたものがこうして形になったことはとても嬉しく、感慨深く感じながら辺りを見渡した。

結婚式と魔女の森の雰囲気を醸し出す会場には、優しく照らすキャンドルの明かり。

口紅のパッケージデザインにもある白いアネモネもふんだんに飾り付け、ケータリングもブルーゼリーや粉雪がかかったようなスイーツをはじめ、真っ白な雪をイメージさせるノンアルコールカクテル等が並んでいる。

楽しそうにスマホで写真を撮るゲストから、今一度ステージへと目を戻した時だ。


「会場、使えて良かったな」


オープニングに流されたコンセプトムービーについて取材を受けていた鳳さんがしれっとした態度で私の隣に立った。


「一時はどうなることかと思いましたけどね」


ちょっとだけ嫌味を込めて返すと、鳳さんはわざとらしく咳払いをする。

けれど一拍置いて「ごめん」と呟いたので、私もそれ以上意地悪するのをやめた。


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