御曹司とおためし新婚生活
「東雲は?」
「向こうで東條社長と話してます」
会場の端の方で発表会の様子を伺いながら談話しているのは、高級スーツに身を包んだ明倫堂の社長。
貫禄のある東條社長と並んでいても堂々として見える真斗さんは、社長の言葉に時々頷き、唇を動かしている。
「亜湖ちゃんは、あいつが不動産王の御曹司だってのは知ってた?」
「鳳さんからここの話が出た時に東雲部長から初めて聞きました」
「そっか」
頷いた鳳さんは、真斗さんをどこか遠くを見るような瞳で眺めた。
「俺と東雲はさ、お互い大企業の御曹司で、三男坊同士って共通点もあって、高校で知り合ってから俺の方で勝手に親近感湧いて近づいたんだ」
懐かしそうに僅かに目を細め、今度はステージの奥に設置されている巨大スクリーンに映る自らが撮ったコンセプトムービーに視線をやる。
美しい魔女が、白い息を吐きながら雪に覆われた森を歩くシーンは、柔らかでいて幻想的だ。