御曹司とおためし新婚生活


「俺、中学の頃から写真が好きでさ。人とか物とか景色とか、いろんなものの表情を撮ってたんだけど、東雲だけはいつも無表情か不機嫌そうな顔しかなくて」

「それは想像つきますね」

「だろ? だから、いつか笑った顔を撮ってやるって勝手に意気込んでたんだけど、大学出てから疎遠になっていってさ。でも、明倫堂で仕事請け負うようになったらまさかの再会。けど、相変わらず無愛想だし笑わないから、今後こそってムキになってたところに……亜湖ちゃんが現れた」


私の名を口にして、今度はこちらに視線を向けた鳳さんの顔には微笑みが乗っている。


「君を見る東雲の目が柔らかさを持ってるのに気づいてさ。君が関われば東雲の表情が変わるって確信したよ。だから、賭けに出てみたんだけど……」

「やりすぎです」

「ハハハ、ごめん」

「でもさ、付き合い長いのに笑顔のひとつも見せやしないんだ。少しくらい」

「長い付き合いだから事実を伏せておいてやったんだろうが」


いつの間にいたのか。

真斗さんが背後から私と鳳さんの間に割って入る。


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