御曹司とおためし新婚生活


「ま……東雲部長」


驚いてうっかり名前で呼びそうになったのを直してから「お疲れ様です」と伝えると、真斗さんは「お疲れ」と返してくれた。


「お偉いさんの相手はいいのかい?」

「ああ。それより、向日にちょっかい出すなよ」

「いやいや、それは約束できないなぁ」


からかうように返した鳳さんを真斗さんが睨む。

なんというか、鳳さんのそういう返しが、東雲部長の笑顔を拝むチャンスを無にしているのではと呆れていると。


「亜湖ちゃん」


私を隠す真斗さんから覗き込むようにして鳳さんが声をかけてきた。


「今度こっそり、君しか見れない東雲の写真撮っておいてくれる?」

「却下だ」


真斗さんが素早く拒否すると、鳳さんは「俺は亜湖ちゃんに頼んでるんだよ」と跳ね付ける。

鳳さんは気付いていないようだけど、真斗さんは鳳さんには遠慮がないし、それは心を許しているからではないかと私は思っている。

ただ、互いに素直じゃないばかりにぶつかってしまうようだけど。

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