御曹司とおためし新婚生活
「異議あり! 東雲部長! 異議ありです!」
「落ち着け、向日。声がでかいぞ」
「あああああ、す、すみません。でも、こればかりは声も大きくなっちゃいますって」
「何が問題だ。言ってみろ」
まるで仕事でのトラブル報告を促すように、東雲部長はスラリと長い手足を組む。
「全部です。全部問題です」
「それは、相手が俺では不服で、この家も、場所も問題があるということか」
彼は切れ長の瞳を細め、軽く睨んだ。
「ぶ、部長が相手なのは不服ではなく、むしろ恐れ多い気持ちが勝ってます。でもまずはそこではなくて、昨日のお話ですが……その、本気なんですか?」
「試しに結婚生活をすることか?」
部長の問いかけに「はい」としっかり頷いてみせる。
「本気だ。俺はいいと思ったものは試してみることにしている。文句があるなら聞いてやるが」
「も、文句はないです。でも、わ、私で、いいのかな~と」