御曹司とおためし新婚生活
【第三話】新しい一面


整然と並ぶ竹垣の塀に囲まれた伝統的な日本家屋。

植木が出迎えるアプローチを進むと、黒い瓦屋根の下には優しい木目の玄関扉。

格子を用いた引き戸を開けば広い玄関ホールがあって、その奥、無垢材が多用されたリビングの大きな窓からは見事な日本庭園が目に飛び込んでくる。

そして、その窓を開けると、広々とした縁側が伸びていて。

引っ越してきて早々、この緑あふれる縁側が。


「あ~っ、極楽~」


私のベストオブくつろぎの場所になった。

陽が落ち、引っ越し作業に疲れた私は縁側に寝そべって瞼を閉じる。

自然と思い出すのは東雲部長と差し飲みをした日のこと。

乾杯した私たちはお試し結婚生活を実行するにあたり、まずは引っ越しを最優先で動くことになった。

ちなみに、お試し期間は半年。

私は三カ月で十分じゃないかと進言したのだけど、雇用に関しても三カ月では協調性や能力を正しく見定められないことがあるという東雲部長の意見で半年となった。

いやこれ仕事じゃないです、真面目か!

と、全力で突っ込まなかった私を誰か褒めてほしい。

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