御曹司とおためし新婚生活


「何が不安だ?」


東雲部長はノートパソコンをそっと綴じると、ソファーに置いて長い足を組んだ。


「いえ、その。結婚生活を試すにあたって、大事なことを調べまして」

「それで?」

「そうしたら、これ、ここ見てください」


見せた方が早いかなと、私は彼の隣に腰を下ろしてスマホを操作する。

すると、東雲部長はひょいと顔を寄せ、私が手にしているスマホを覗き込んできた。

その近さを意識して胸がトクンと、強く打つ。


「この三つがどうも重要らしいんです」


変に意識し続けないようにできるだけいつも通りに振る舞っていると、部長はソファーに背を預け腕を組んだ。

捲られた袖から見える腕は程よく筋肉がついていて、意識しないようにしている私の心を刺激する。


「……なるほどな。家事に関してはさっき話した通りで、あとは応相談で異存はないな?」

「は、はい。それで、この二つ目がどうなのかなと」

「笑顔を心掛ける。いいことじゃないか」


東雲部長は何が問題なんだと眉を顰めた。

心掛けがいいことくらいわかっている。

問題はそこじゃない。

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