御曹司とおためし新婚生活
「こちらこそよろしく。打ち合わせには亜湖ちゃんもいるんだっけ?」
「はい。私も同席させてもらいます」
シャルマント新作のプレリリース発行。
今日はそのリリースに向けて商品サンプル撮影を行う為の打ち合わせが午後二時から行われる。
「そっか。仕事でちゃんと顔会せるのはこれが初めてか。嬉しいなぁ、亜湖ちゃんと仕事できるの」
それ、絶対他の女性にも言ってますよねと心の中で突っ込んで、ヘラッと笑っている鳳さんに「私もです」なんて返した。
でも、鳳さんの撮影には立ち会いたいと思っていたので、そこは本当。
彼の写真は今まで何度も見させてもらっているけれど、商品をよく理解し、魅力的に撮られているのだ。
「あー、ごめん。俺、少し電話してきます。打ち合わせの時間までには戻るから」
スマホを持った手を軽く上げた彼は、特に慌てた様子もなくエレベーターに乗り込む。
奥田マネージャーと二人で小さくお辞儀し、鳳さんが見えなくなったところで私は口を開いた。
「電話の相手、女ですかね」
「そうみたいよ。一瞬見えたけど、ディスプレイに女の子の名前が表示されていたし」
「わー……」