御曹司とおためし新婚生活
【第五話】背中を押してくれたから
理想の結婚生活を試すべきにあたり、重要なのではと思われるもののひとつ。
それが、休日は一緒におでかけ論だ。
共に何かを楽しむ、というのがポイントのこちら。
引っ越し初日は、東雲部長がインドア派だったらどうするんだという心配もあったけれど、それは全くの杞憂に終わった。
「部長、ひとつ質問してもいいですか」
「ああ」
「主人公が最後に振り返った時、なぜ彼は主人公に背を向けたまま歩いて行ったんだと思います? 男性目線の意見をください」
なんと、私も部長も映画が好きという共通点が見つかり、週末は映画館で映画を観て夕食を食べて帰るというのがお決まりのコースになりつつあった。
先週は東雲部長が観たいといったアクション映画。
今日は私が観たかった恋愛もの。
こうして、映画のあとに作品について部長と語り合うのが私にとって結構楽しい時間となっている。
「まあ、単純に考えれば主人公の足を引っ張らない為だろう」
「ですよね! 気持ちは絶対主人公に向いたままですよね!?」
「落ち着け。ほら、水だ」
ゆったりくつろげるソファー席の個室。
四角いテーブルを挟んで、東雲部長は私にミネラルウォーターが注がれたグラスを手渡した。
私はそれを受け取り、ひとくち多めに含んで喉を潤す。