御曹司とおためし新婚生活
「ありがとうございます! そう仰っていただけて光栄です」
自分のアイデアを褒めてもらえたのが素直に嬉しく、一員としてここに立ってもいいのだと肯定されているようで、心の奥底から自信が湧いてくる。
そっと東雲部長に視線を送ると、彼は僅かに口角を上げて小さく頷いた時だ。
「君が褒められると自分のことみたいに嬉しいな」
カメラの代わりに紙コップを手にした鳳さんが、笑顔を浮かべながら私の肩を抱いた。
いきなりの登場に驚いて、鳳さんの手を払うこともできずにいると。
「お前には全く関係ないだろう」
東雲部長の手が、鳳さんの手を追い払ってくれる。
すると、鳳さんは片方だけ口角を持ち上げ、楽しそうというよりも意地悪げに目を細めた。
「……ふーん?」
首を傾げた鳳さんに、東雲部長が不快だとばかりに眉根を寄せる。
「なんだ」
「いや、前も亜湖ちゃんを助けてただろう」
「部下だからな」
「でもお前それ、由香子さんとか他の部下にはしないのわかってる?」
鳳さんの言葉に、私は思わず目を丸くした。