御曹司とおためし新婚生活
沈んでいた意識が浮上したのは、暑さからだ。
じわりと汗ばんだ肌と寝心地の悪さに、私は瞼を開いた。
室内は暗く、朝がまだやってきていないことを示している。
いつの間にベッドに移動したのか。
ぼんやりと考えて。
熱帯夜の寝苦しさから逃れるべく、冷房をつけようと身じろいだところで違和感に気付く。
私の腰を、がっちりとホールドしている何かがあるのだ。
シーツでも巻き付いているのかと思って手で掴んでみた私の意識は一気に覚醒。
腰に回されているそれは人の腕で。
よく見れば私は下着すら纏っていなくて。
心臓が暴れ馬のように打つ中、恐る恐る、ゆっくりと右隣を確認すれば。
「……う、嘘でしょ……」
あどけない顔で眠る東雲部長がいた。
雷にでも打たれたかの衝撃が走る。
何がどうしてこうなったのか。
ちっともさっぱり覚えていない!
ああ、でも私ってばかなり飲んだ!
てことは、酔っぱらって部長を押し倒したのでは!?
もしくは夜這い!?
上司に夜這いをかけたなんて、これもうリストラ案件──
「……おはよう」
慌てふためいていると、気配を感じたのか東雲部長が目を覚ました。