御曹司とおためし新婚生活
「あれ……? 私の部屋?」
「だから待てと言っただろうが」
「私、酔っぱらって部長に夜這いをかけたのでは?」
「かけられていない。お前が一緒にいろというから俺が襲った」
俺が襲った。
強烈なフレーズが頭を駆け巡る。
「な、なん、なんで」
どもるのみで言葉は続かず、それでも部長は理解してくれたようだ。
部屋の入り口で頬を赤く染め、立ち尽くす私に彼は告げる。
「興味が、確信に変わったからだ」
はっきりと声にして、だけど内容はわかりかねるもので。
「よく、わかんないんですけど」
「なら考えろ。おやすみ」
「え、ちょっと、そこ私のベッドです!」
リモコンを操作し冷房をつけた東雲部長は、シーツをかぶると「お前の匂いは安心するな」と言い残し、私に羞恥を与えたまま眠りについてしまった。
もちろん、私は彼の横に潜り込むなんてできるはずもなく。
朝が来るまで、リビングのソファーで頭を抱えていたのだった。