御曹司とおためし新婚生活
魅力的なタイトルと心を掴めるようなリード文。
全体的に読みやすさを意識し、けれど正確に伝えるよう努める。
頭ではわかっているけれど、いざ書いてみるとなかなかこれという記事にならなくて。
何度もバックスペースキーを押しては、キーを叩き文字を連ねるという作業を繰り返す。
合間にサンプルの貸し出しに対応したり、他の作業もしつつだったので、今日はまんまと残業になってしまった。
キーボードに乗せてた手を止め、パソコンから目を離す。
両親から就職祝いにと買ってもらった腕時計に視線を落とすと、時刻はすでに二十一時を過ぎていた。
終電まではまだ三時間ほど余裕がある。
煮詰まってしまったし、少しだけ休憩を入れようと、ひとつ下の階にある休憩スペースに移動した。
大きな窓からは都内の夜景が見え、休憩スペースの端に設置されている自動販売機でアイスティーを購入。
ソファーベンチに腰を下ろし、蓋を開けて喉を潤せば、自然と思い浮かんだのはアイスティーが好きだと言っていた谷川さんのこと。
彼女は、恋をした時に迷ったりしたのだろうか。
奥田さんも、恋に振り回されたりはしなかったのだろうか。
それとも、迷う暇も振り回される暇もないくらい、仕事に真っ直ぐだったんだろうか。
おかしいなぁ……。
東雲部長と生活すれば、鋼の心をゲットできるはずだったのに。
うっかり恋に落ちて、ガラスの心になってしまうなんて。