御曹司とおためし新婚生活


「谷川さんも言ってたけど、東雲は本当に女にはそっけないんだよ。もちろん、社会人として最低限の優しさは持ち合わせて対応してるようだけど、基本、仕事以外のことでは関わらない。例え、俺が明倫堂の子に手を出しても、製品や明倫堂が傷つかなければ関係ないんだ」


そこまで語ると、鳳さんは私の髪に触れ一束指に絡める。


「でも、亜湖ちゃんだけは違った。飲んだ日の帰りにも君を庇って、スタジオでも俺から君を守った。そして何より」


一度言葉を切り、ス……と、鳳さんの瞳が斜め上に動く。


「今も、俺を怖い目で睨んでる」


その言葉に彼の視線を辿り振り返れば、確かに、鋭い目をした東雲部長がこちらを見ていた。


「君は、あいつの特別だ」


横から聞こえてくる声にそっと鳳さんに視線を戻すと、彼はにやりと笑う。

なぜそんな風に笑うのか理解できず身動ぐと、するりと彼の指から私の髪が解けた。

コツコツと革靴を鳴らしながら東雲部長が私たちの前に立つ。


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