御曹司とおためし新婚生活
「は、はい。すみません。でも」
「いいからほら、回線繋いじゃなよ」
……谷川さんに繋げることを促した、ということは。
本当に純粋に仕事を手伝おうとしてくれているのだろう。
真面目なところもあるんだなと、やや警戒心を緩め、スケジュール帳にメモしておいた谷川さんの連絡先をリモコンで入力していたら。
「ねぇ、亜湖ちゃん」
いつの間に迫っていたのか。
鳳さんは力強い腕で私の腰を引き寄せとかと思うと、横から抱くような体勢で腕の中に閉じ込めた。
「東雲とはもうヤッた?」
「なっ……」
耳元で囁かれた内容に、私は耳まで真っ赤にしてしまう。
すると、鳳さんはクスクスと体を揺らした。
「素直で可愛いなぁ。でもそうか。東雲は君を抱いたのか」
ますます欲しいなと、呟く彼の微笑みはどことなく歪んでいる。
冷水でも流されたかのような寒気が背筋に走って、私は鳳さんの腕から逃れようと身を捩った。