上司にプロポーズされて困ってます
法務部の柴本さんは本当に美人さんだ。
見た目もさることながら性格も良くて、しかも仕事が出来る法務部の才女。
私と同じ名字だけれど、親戚でもなんでもない。
おそらく向こうは私のことなど知らないだろう。
社内の有名人と平々凡々な私とでは、月とスッポンほどに違うのだから。
しかも結婚相手が弁護士さんって、凄すぎる。
私にとっては夢物語の世界だ。
「課長、もしかして勘違いじゃないですか?多分、というか、絶対そうだと思いますけど……」
「そう、だな」
相変わらず力強く抱き締められているせいで、課長の表情は伺い知れないけれど、なんだか気まずそうな返事が返ってきた。
普段は仕事が出来て、何事においても冷静沈着に対処する課長を見知っているだけに、今目の前にいる課長の姿が意外すぎて不思議な気分になる。