きっと夢で終わらない
「杏那先輩ー!」
声が聞こえて、顔を上げる。
首を伸ばすと、真っ赤な布地に、胸元に白いフォントで「1C」と書かれたクラスTシャツを着たきいちゃんが大きく手を振って私のところに駆けて来るのが見えた。
私は手を振りかえす代わりに笑ってみせた。
「こんにちは!」
声が弾んでいるきいちゃんは、この行事を楽しんでいるようで、鼻の頭がちょっぴり日に焼けていた。
「こんにちは」
「杏那先輩は何にも出なかったんですね。一覧表に名前なかった」
「ああ、まあ……そうだね」
本当は、五十メートルを7秒前半で走れる脚力を持っているけれど、あまり目立ちたくもないから体力測定の時もほどほどにしかやる気を出さない。
だから結果的に違う人に役が回った。
「きいちゃんは?」
「短距離に出たかったんですけど、じゃんけんで負けました。だからリレーで見返します。そういえば、今日いいもの持って来たんですよ」
そう言ってきいちゃんは、背負っていたナップザックからネコミミのカチューシャを出した。
黒いカチューシャに、ベージュのファーの猫耳が付いている。
耳自体は小ぶりだけど、正直派手だ。
「……ネコミミ?」
「そうです。杏那先輩似合うと思って」
すごい真顔で言われて、事の重大さを一瞬忘れそうになった。
声が聞こえて、顔を上げる。
首を伸ばすと、真っ赤な布地に、胸元に白いフォントで「1C」と書かれたクラスTシャツを着たきいちゃんが大きく手を振って私のところに駆けて来るのが見えた。
私は手を振りかえす代わりに笑ってみせた。
「こんにちは!」
声が弾んでいるきいちゃんは、この行事を楽しんでいるようで、鼻の頭がちょっぴり日に焼けていた。
「こんにちは」
「杏那先輩は何にも出なかったんですね。一覧表に名前なかった」
「ああ、まあ……そうだね」
本当は、五十メートルを7秒前半で走れる脚力を持っているけれど、あまり目立ちたくもないから体力測定の時もほどほどにしかやる気を出さない。
だから結果的に違う人に役が回った。
「きいちゃんは?」
「短距離に出たかったんですけど、じゃんけんで負けました。だからリレーで見返します。そういえば、今日いいもの持って来たんですよ」
そう言ってきいちゃんは、背負っていたナップザックからネコミミのカチューシャを出した。
黒いカチューシャに、ベージュのファーの猫耳が付いている。
耳自体は小ぶりだけど、正直派手だ。
「……ネコミミ?」
「そうです。杏那先輩似合うと思って」
すごい真顔で言われて、事の重大さを一瞬忘れそうになった。