きっと夢で終わらない
抜け目がないというか、しっかりしているというか。
でもわざわざ私がネコミミをつける必要もない。クラスの子に協力して貰えばいいのに、と思いつつも「まあ、半分はネコミミつけた先輩と写真撮りたいという私の願望です」なんて言われたものだから、渋々ながらも了承した。

数少ない「友達」と呼べるかもしれない後輩の頼みを無下にもできるまい。
自覚した途端にこれだ。
だから気づきたくはなかったのに。

ほんのり芽を出しかけた期待を、私はすぐさま摘み取った。


そう来なくっちゃ、とはしゃぐきいちゃんに腕を引っ張られるまま、アウトフィールドに降りていった。


「まもなく、先生対抗借り物競走を行います。参加する先生方は本部前に集まってください——」


競技の開始を知らせるアナウンスが場内に響きわたる。
それぞれの場所にいた先生方は生徒たちに背中を押されながらエントリーをするために本部前に駆けていく。

フィールド内にいた生徒も、フィールド外にいた生徒もぞろぞろと移動して、インフィールドを囲うように円を作る。血眼になってお題に当てはまる人物を探そうとする先生たちが面白いので、全校生徒で観客に徹する。

参加するのは各クラスの担任と、その他体力に自信のある先生たち。
花純先生ももちろん参加するようで、スタートラインに並んでいた。生徒たちは各々トラックを囲むように円形に各クラスごとに集まっている。私のクラスメイトの三年B組も、その場所から声援を送っていた。
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