きっと夢で終わらない
そうなのだ。私は葛西先生、もとい弘海先輩の代わりに、この高校にやって来た。
あれから高校を卒業して、一浪を経て大学に行った私と、入れ違いでこの高校に国語教師として戻ってきていた弘海先輩。
弘海先輩の進路はこれっぽっちも知らなくて、偶々応募したら、そう言うことだった。
全部後になって知ったこと。

私自身、教育実習は他校で行なっていたし、この高校に就職することはないと思っていたのに、結局一時期ではあるが、戻って来てしまった。


この後の飲み会だって、私は不安でいっぱいだ。
かつての恩師と酒を酌み交わす。またとない機会。大いに嬉しい。


でも問題は、弘海先輩もその席に来ると言うこと。

もうほとんど生活に支障がない程度に回復したと言うことで、私と弘海先生の顔合わせも兼ねて設けられた宴会なのだ。「先輩後輩の間柄だし今更かたっ苦しい挨拶だとは思わずにね」と言われたけれど、過去が過去なだけに気まずい。


それに、私はどこか、きっとそれは弘海先輩なのか、と疑念も抱いていた。
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