きっと夢で終わらない
寝ても、覚めても
「杏那先輩、知ってますか?」
まだ大学生だった頃、夏休みにきいちゃんが私を訪ねてくれたことがあった。
今では一番話すし、一番共有し合うし、一番の仲良し、親友とも呼べる、きいちゃん。
きいちゃん自身は在学時代、私の張っていた壁をぶち破りたくてウズウズしていたらしいが、正面切って突破するのは躊躇われたらしく、弘海先輩を通して私の自分に対する位置付けを探っていたらしい。それであの唐突な「畠本さんは、いつから友達?」発言の謎が、何年振りに解けた。
きいちゃんとは大学が離れ離れになったが、こまめに連絡も取り合い、年賀状や誕生日プレゼントも贈りあっていた。
そんなきいちゃんは私のところに来る前に地元に寄っていたそうだが、そこでひとつ、噂を耳にしたらしい。
「早瀬神社ってご存知ですか?」
きいちゃんはくるくるとストローで紅茶をかき混ぜて、私はチーズケーキをフォークで切り分けた。知ってるよ、と返事をしたが、行ったことがある、とは言わないでおいた。
「あの神社に流れてる川、『時空の流れ』って言う異名があるらしいですよ」
「『時空の流れ』?」
「なんかちょっとありえない再会が望めるらしいです」
「例えば?」
「死んだはずの人と会えるとか」
なんてファンタジックでスピリチュアルな話。
当然私は軽く受け止めて、きいちゃんも「ただの噂にすぎないですけど」と、本気にしている様子はなかった。
早瀬神社の笹舟文化に乗じて願望が一人歩きしたに違いない。
人間は夢を見たがる生き物だから。
きいちゃんは、九月に行われるライトアップの時期に、絶対一度は二人で行って笹舟流しましょうね、とそれでも笹舟の約束を信じているようで、私は二つ返事で快諾した。
でも、もしそんなことがあればいいな、とは思っていた。
笹舟が蛇行した川の流れにも負けず、下流に流れれば、また会うことができる。
約束は、あの時再会を果たしてしまったから二度目はないにしろ、そのジンクスについてはいいなと思っていた。
まだ大学生だった頃、夏休みにきいちゃんが私を訪ねてくれたことがあった。
今では一番話すし、一番共有し合うし、一番の仲良し、親友とも呼べる、きいちゃん。
きいちゃん自身は在学時代、私の張っていた壁をぶち破りたくてウズウズしていたらしいが、正面切って突破するのは躊躇われたらしく、弘海先輩を通して私の自分に対する位置付けを探っていたらしい。それであの唐突な「畠本さんは、いつから友達?」発言の謎が、何年振りに解けた。
きいちゃんとは大学が離れ離れになったが、こまめに連絡も取り合い、年賀状や誕生日プレゼントも贈りあっていた。
そんなきいちゃんは私のところに来る前に地元に寄っていたそうだが、そこでひとつ、噂を耳にしたらしい。
「早瀬神社ってご存知ですか?」
きいちゃんはくるくるとストローで紅茶をかき混ぜて、私はチーズケーキをフォークで切り分けた。知ってるよ、と返事をしたが、行ったことがある、とは言わないでおいた。
「あの神社に流れてる川、『時空の流れ』って言う異名があるらしいですよ」
「『時空の流れ』?」
「なんかちょっとありえない再会が望めるらしいです」
「例えば?」
「死んだはずの人と会えるとか」
なんてファンタジックでスピリチュアルな話。
当然私は軽く受け止めて、きいちゃんも「ただの噂にすぎないですけど」と、本気にしている様子はなかった。
早瀬神社の笹舟文化に乗じて願望が一人歩きしたに違いない。
人間は夢を見たがる生き物だから。
きいちゃんは、九月に行われるライトアップの時期に、絶対一度は二人で行って笹舟流しましょうね、とそれでも笹舟の約束を信じているようで、私は二つ返事で快諾した。
でも、もしそんなことがあればいいな、とは思っていた。
笹舟が蛇行した川の流れにも負けず、下流に流れれば、また会うことができる。
約束は、あの時再会を果たしてしまったから二度目はないにしろ、そのジンクスについてはいいなと思っていた。