きっと夢で終わらない





土曜日は隔週で登校日がある。大体月二回。
そして、今週の土曜日、今日は休業。
部活生はもちろん休業に関係なく活動があれば登校するが、高校三年生は希望制の特別講座が設けられていて、登校している人もきっといる。
基本的に休日も解放されているから、自習室がわりに利用している生徒も少なくない。


私はそのどちらにも当てはまらないのだが、別件のために制服に袖を通した。
今日は吹奏楽部の大会で、朝から準備に追われて水やりができないと昨日の朝にきいちゃんが言っていた。
だからと言って別に私に水やりを催促しているわけではなく、世間話のひとつとしてきいちゃんは話しただけで、気にする必要は全くなかったのだが、なんとなく、外に出て見みようと思った。

ぽっくり、死ねたらいいとか、そんな願望。
家にいるよりは、可能性が高くなるだろうし。
そんなわずかな望みに期待して、長年愛用してきた桃色のポシェットには貴重品だけを入れた。

玄関には見慣れた革靴。
通路の奥、閉じられた部屋からは細く明かりが漏れているから、お父さんはきっと起きている。私が出かける準備をしているのは足音で分かっているはずなのに、顔も出さない。

行ってきます。
心の中でつぶやいて、私はつま先の擦れたローファーを履いて外に出た。
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