きっと夢で終わらない
——しかし、私の身体は線路にではなく、後ろに倒れた。
前に出ようとしたのに、何者かに肩を引かれてバランスを崩したのだ。
一瞬何が起こったかわからなくて、背中からじんわりと感じる温もりに、誰かに抱きとめられていることだけは分かった。
ガタガタとものすごい速さでホームに入ってきた電車の車両が何台も何台も目の前を通過する。ガタガタと車体の音が右から左に抜け、電車はやがて減速し、停車した。その様子を呆然と眺めていた。
ピンポーンと軽快な音が鳴って目の前の扉が開く。
放心状態のまま、後ろから押されるようにして乗り込んだ。
すでにほとんど満員の車内、ドア付近に自分の場所を確保して、ドアに背を向けて立つ。
プルルルルと発射を知らせる電子音が、まだ人間の残るプラットホームに響き渡り、ガコンとドアが閉まって、電車は再び動き出した。
人の体温で生ぬるい。エアコンの季節までもう少し。他人と密着せざるおえないほどではないが、少し身体を揺らせば触れてしまう距離には人間がいるので、手すりにつかまり、じっとしていた。
流れていく時間から目を背けるように俯くと、ローファーのつま先が擦れて白くなっているのを見つけた。