きっと夢で終わらない
「葛西先生って、暗かったんですか?」

「中高一貫でしょ?それなりにグループもできてるから、こっちの生徒はこっちで変化には敏感で。時期も時期だったし、打ち解けるのに時間がかかってたね」


弘海先輩はご両親の仕事の関係で、高校二年の秋頃に越してきたことは知っていた。
最も自分からはそんなこと聞かないし、弘海先輩も話してくれなかったから「杏那の仲良くしてる先輩、確か転入生だってよ」と、ともだちから聞いただけだけど。
空きができて行われた編入試験を合格した、唯一の外進生だった。

でも私が知っている弘海先輩は、平気で後輩に水をかけてくるような、いたずら心のある人。
お友達と談笑しながら歩いているのも見かけたことがある。
誰とでもそつなく付き合える、普通の高校生に見えていた。


「だから、中学生の八城さんのおかげかな、って思うのと同時に。中学生と高校生だから、目をつけてたっていうのもあるね。まあ何もやましいことがない、ただの仲良しな先輩後輩ってわかったけど」


何となく目を合わせるのが嫌で、バッグからコンビニの袋を取り出す。
今日は卵とハム、レタスのサンドイッチ。透明の包装をぺりぺり剥いて、1つ取り出す。
「私も明日はサンドイッチにしようかな」という花純先生のお弁当は、三色丼だ。


「でも、決めつけるのは良くないよね」


花純先生は付け合わせのサイコロチーズを口の中に放り込んだ。


「今みたいに違うこともあるだろうし。いい迷惑ね、ごめんね」

「あ、いえ」

「最近ね、よく思うよ。見えることだけ信じるのもよくないなって。それと同じくらい、何かに固執して、大切なことを見失ってしまうこともあるな、って」

「……固執?」
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