きっと夢で終わらない
すると弘海先輩は、私の顔にハンカチを押し付けきた。
視界が不明瞭なうちに、先ほどよりも高まった人口密度を言い訳にするつもりか、おまけに私を抱きしめて来た。
初めは抵抗も見せたけれど、成人男性に女子高生が敵うはずもない。声を出そうにもハンカチで顔を覆われているし、涙は止めどなく溢れてくるので、この醜態を晒さないことを優先した私の脳は、そのまま身を委ねた。
ハンカチにはもしやエーテルが染み込まされているかと危惧したがそんなことはなく、漏れる嗚咽をそれで抑えた。

感情のコントロールがうまくできずに、引きつけまで起こしかけたが、電車に揺られていると、徐々に涙も興奮も落ち着いてきた。

その間ずっと、弘海先輩の手は肩に回っていた。
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