きっと夢で終わらない
「信じてほしい。信じてみてよ」

「無理だよ。無理」

「じゃあ、僕がここにいる間だけ、時間を頂戴」

「無理だって」

「じゃあ、三日。今週だけでいいから」

「だから」

「杏那に生きていて欲しいんだ」


周囲を気にしていたはずなのに、言葉も崩れきって、いつのまにか「杏那」と私を呼ぶ。


私は本当は誰かにずっと欲しがられたかった。
存在していいのだと、誰かに言葉で言って欲しかった。
言わないで伝わる思いもあるはずだけれど、必要とされていると実感したかった。

ただの空気じゃないって。
例え私から離れても、私といた時間が相手にとって少しでも良いものであったのか、知りたかった。

何も言わないで、いなくならないで欲しかった。


「……過信しすぎです」

「どうして?」

「生きてほしいと願われるほど、人間じゃない」

「僕にとっては、そうだよ」


弘海先輩はどうやら私を逃す気がないらしい。
そういえば、頑固な人だったことを思い出す。
プランターのアガパンサスだって、弘海先輩が春に見れないことを考慮して私はパンジーを提案したのに、アガパンサスと言って聞かなかった。
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