きっと夢で終わらない
転機は高校一年生の、二学期。
夏休みが終わって、文化祭を控えた月末に控えた、九月の中旬。
私は十六年間生きてきて、その日初めて告白というものをされた。
みんな浮かれていて、夏の間にもいくつかもカップルができていた。私もその渦中の人間になっていた。

野球部の芹澤くんは、男子の中でもよく話をする方だった。
当時読んでハマっていたシリーズ本の趣味が合い、それがきっかけでよく話すようになった。でもまさか好意を持たれていたとは露ほども思っていなかったので、突然の告白に当然面食らった。


言わずもがな断った。
「芹澤くんとは、友達のままでいたい」と表面上の理由をつけて。
ところが芹澤くんは意外に諦めの悪い人で「すぐに返事決めてしまわないで」とか「それでも落ち着くまで、想っていてもいい?」とか「友達から始めちゃダメ?」とか「もしかして他に好きな人がいるの?」とか、挙句「松村に遠慮してるの?」と食い下がって来た。


さっさと解放してくれ、と思いながら右から左に流していたが、芹澤くんの口から美紀のことが出て来て、耳を疑った。

呆気にとられて聞き返すと、どうやら美紀は夏休みが終わる前に芹澤くんに告白していて、芹澤くんはそれを断ったと教えてくれた。この場合守秘義務はどうでもいいのか? と思うよりももっと、美紀からその話を聞かされていなかった事実に愕然とした。
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