ベストフレンド~本当の友達~
学校を出る。

桜の花びらが風に揺れていた。

「綺麗だよね」

会田さんが桜を見ながら、しみじみと言った。

「え、私が?」

浜岡さんは会田さんに笑顔を向ける。

「はあ……」

小村さんと会田さんのため息が同時に出た。

「ちょっと、ため息つくことないじゃん。ね、桑野さん」

私は急に振られてどうしていいかわからず、黙り込んでしまった。

「友里先輩、桑野先輩を困らせちゃだめですよ」

「はーい」

校門をくぐり、学校の敷地の外に出る。

「桑野さん、家どの辺なの?」

浜岡さんに聞かれる。

知られたくないけど、嫌とは言えない。

嘘をつく器用さも度胸もないので、少しぼかして言った。

「へー、結構いいところだね。新しく家建てたの?」

今度は会田さんが聞いてくる。

「ち、違う……」

私は今、両親と住んでいない。

叔母さんの家に住んでいるのだ。

元々、引っ越して新居を建てるようなお金もないし、まだ家のローンが残っているそうなので、このような形になった。

「叔母さんの家に、住んでる」

情けない声で、なんとかそれだけ言えた。

「え? お父さんとお母さんは?」

浜岡さんが首をかしげる。

「友里先輩。いろいろ事情があるんですって。聞くのはやめましょうよ」

小村さんが助け船を出してくれた。

ありがたい。

「ご、ごめんね桑野さん」

浜岡さんは慌てて謝罪する。

私はうなずいた。
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