ベストフレンド~本当の友達~
放課後になり、昨日と同じファミレスに着いた。

昨日同様、ドリンクバーで居座る。

「さて、昨日と同じく、話題カード作ってきたよ」

浜岡さんが話題カードを取り出す。

「また? 自由に話せばいいじゃん」

会田さんが呆れる。

「いいからいいから、じゃあ桑野さん引いて」

「うん」

私は1枚引く。

裏返すと、初恋相手について話す、と書かれていた。

「あー、それ引いちゃったかー」

浜岡さんが笑みを見せる。

「あんた、昨日も同じようなこと言わなかった?」

会田さんが言った。

「じゃあ、私から言うね。初恋はまだです!」

浜岡さんは少し急いで言った。

「えー絶対嘘ですよ。高2にもなって、初恋まだなんですか?」

「だって、まだだもん」

野部君とは付き合ってないのか。

「次、佳織ね」

「私ですか? 私は小学校6年の時の同じクラスの男子です」

「え? 女子?」

浜岡さんが茶々を入れる。

「男子です! スポーツも勉強もできて、顔も格好良かったですね。まあ、身長はちょっと足りなかったですけど、人気はありましたね。終わりです」

「じゃあ、次は美羽」

「私か。私は中学の時の先輩かな。サッカー部の部長で、まあ格好良かったかな。今頃、どうしてるんだろう」

「じゃあ、最後は桑野さん」

ついに、私の番だ。

だけど、困った。

私の初恋相手は、漫画の登場人物だ。

現実の男子に恋をしたことは、まだない。

というより、いじめられていたせいで、現実の恋愛をする余裕がなかった。

まあ、いいか。

言ってみよう。

「わ、私は漫画の登場人物で……」

顔が熱い。

多分、赤くなっている。

みんな、真剣に私の話を聞いてくれている。

こんな風に話を聞いてもらうのは、久しぶりだ。

私はなんとか話し終えた。

「よーし、次のお題行こう」

浜岡さんはまた、カードを提示してくる。

考えてみれば、浜岡さんがカードを作ってきたのは、私のためかもしれない。

全員に平等に話す機会を与えるため。

話題カードがなかったら、私は黙って聞くだけになっていたかもしれない。

まあ、全部憶測だけど。

その後も、話題カードで雑談を続けた。

昨日とは違って、全部の話題にちゃんと答えることができた。

時間は過ぎ、そろそろ帰った方がいい時間だ。

私たちはファミレスを出た。
< 22 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop