ベストフレンド~本当の友達~
家に着いた。

お風呂に入った後、せっかくなのでテニスのプロについて調べることにした。

30分ほど調べてわかったことは、いくつかある。

ランキングがあること。

日本の大会だけでは生活していくことはできず、海外を飛び回っていろんな大会に出場する必要があること。

4大大会と呼ばれる、地上波でも放送される大きな大会があること。

これらが、わかったこと。

テニスのプロも大変だ。

でも、仕事にしたいくらいだから、きっとテニスが大好きなのだろう。

私は将来は何も決まっていない。

強いて言えば本が好きだけど、作家になりたいとか、編集者になりたいとまでは思わない。

図書館で働くのもいいかもしれない。

でも、公務員だから、なるのは大変そうだ。

勉強はそこそこ得意だけど、公務員になるための試験は難しいのだろうか。

今はまだ将来のことは、考えなくていいかな。

それより、明日だ。

お互い、具体的な行く場所とかは言わなかった。

浜岡さんは何か考えているのだろうか。

私はゆっくりと、眠りに落ちた。



翌日。

昨日準備した服を着て、叔母さんを起こさないように家を出た。

弁当を作ろうか考えたけれど、やめておいた。

適当に買えばいいだろう。

集合場所は駅前だ。

集合時刻の10分前に着いた。

まだ、浜岡さんはいない。

しばらく待っていると、浜岡さんが走って来た。

「ごめん、桜。待った?」

「ううん」

なんか、自然に下の名前で呼ばれたような。

「良かった。いろいろ考えてたら時間掛かっちゃって。じゃあ、行こう。桜」

私は浜岡さんについていく。

私も下の名前で呼ぶべきだろうか。




浜岡さんに付いて行き、到着した場所は近所の公園だ。

割と広く、学校のグラウンドくらいあり、様々な遊具が置かれている。

休日ということもあり、家族連れなどで賑わっている。

「よし、鬼ごっこしよう」

浜岡さんは着くなり言った。

「鬼ごっこ?」

「え、知らないの?」

「いや、知ってるけど」

高校生がする遊びではないと思う。

どうして鬼ごっこなんだろう?

「私の方が足が速いと思うから、ハンデとして桜の荷物持った状態で追いかけるね」

いつの間にか、浜岡さんが鬼に決まったようだ。

浜岡さんに荷物を渡す。

「10数えるから逃げて。さ、数えるよー」

少し戸惑ったけど、せっかくなので楽しむことにした。

私は走って逃げる。

「9、10! 桜ー! 行くよー!」

浜岡さんが走って追いかけてくる。

速い。

油断していたので、あっという間に距離を詰められた。

そして、そのまま簡単にタッチされた。

「捕まえた! 次、桜が鬼ね」

「う、うん」

私は数え始める。

しかし、10まで数えた頃には、浜岡さんははるか遠くにいた。

2人分の荷物を持っているのに、恐るべき体力と走力だ。

私は必死に追いかける。

浜岡さんはわざとゆっくり走り、こちらを待っている。

「そんなんじゃ、捕まえられないよ~」

浜岡さんは振り返りながら笑みを見せる。

く、悔しい。



1時間ほど鬼ごっこをしただろうか。

「はあ、はあ」

私は息が切れ、完全に体力を失っていた。

「楽しいね! 桜」

一方浜岡さんは余裕がある。

以前、本格的にスポーツでもやっていたのだろうか。

女子テニス部は体力作りなんてしている様子はないし。

それにしても、全力で走り回るだけでこんなに楽しいとは思わなかった。

まあ、浜岡さんは全力を出していなかったようだけど。

「じゃあ、次は……」

浜岡さんは自分の荷物を漁る。

「シャボン玉やろう」

また小さな子供みたいな遊びだ。

だけど、浜岡さんと一緒なら、楽しめそうな気がした。



シャボン玉をしていると、子供たちが寄ってきた。

私と浜岡さんは、どちらが大きいシャボン玉を作れるか競走中だ。

子供に構っている余裕はない。

いつの間にか、シャボン玉を作るのが上手になっていった。



時刻は11時半になった。

お腹が空いてくる頃だ。

「おにぎり持ってきたけど、食べる?」

浜岡さんは巨大な球体状のおにぎりを取り出す。

浜岡さんのバッグには何でも入ってるなあ。

「せっかくだし、もらうね」

私と浜岡さんは見晴らしのいい場所を選んで、レジャーシートを敷き、一緒におにぎりを頬張る。

春の穏やかな風が吹き抜け、暖かな日光が降り注ぐ。

「外で食べるとやっぱいいね」

浜岡さんがしみじみと言った。

私はうなずく。

公園で鬼ごっこして、シャボン玉して、おにぎり食べて。

ほとんどお金を使っていないけれど、楽しむことができた。

これは全て浜岡さんのおかげだ。

「ありがとう……友里」

私は自然と、お礼を言っていた。

そして、下の名前を呼んだ。

「うん!」

友里は気付いているのかいないのか、いつもの笑顔を見せてくれた。



食べ終わった後、トイレに行きたくなったので一旦離れる。

そして戻ってきたら、友里は気持ち良さそうに寝ていた。

なんだか、自然と笑みがこぼれてしまう。

私も昼寝することにした。

友里の横で寝ころび、目を閉じる。
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